難聴で電話が聞き取れない私が、仕事では避けて私生活ではかける理由

左は会社で鳴っている固定電話に背を向ける補聴器の男性、右は自宅でスマホを口元に近づけて笑顔で話す同じ男性。中央に「仕事では、出ない。私生活では、かける。同じ耳で、同じ電話です。」の文字

電話が鳴っている。
たぶん、自分が出たほうがいい。
でも、聞き取れなかったらどうしよう。

そう思ったことがある方に、この記事を書いています。

私は感音性難聴(音を受け取る部分がうまく働かないタイプの難聴)で、両耳に補聴器をつけて働いています。仕事では、電話をほとんど使いません。そのかわり、私生活ではふつうに電話をかけています

同じ耳なのに、どうして分かれるのか。私の場合、その違いは「聞こえるかどうか」ではありませんでした。聞き間違えたときに、何を背負うかの違いでした。

この記事でわかること

  • 電話を「できません」で終わらせずに、仕事から外していく方法
  • 補聴器とスマホをつなぐと、電話の聞こえ方がどう変わるか
  • 聞き取れなかったときの、相手を困らせない頼み方

面接のときに「電話は避けたい」をどう伝えたかは難聴の私が、面接を怖いと思わない理由に書きました。この記事は、そのあとの話です。実際に働きはじめてから、電話をどうしているかを書きます。

私の席に、電話はありません

今の職場では、私の席に電話を置いていません。だから、私あての電話が直接かかってくることはありません。

それでも、電話が鳴り続けているのが聞こえると、心が落ち着かなくなります。

オフィスのデスクで固定電話が鳴っている。少し離れたところで、補聴器をつけたスーツ姿の男性が口元に手をあて、出るべきか迷っている

自分が出たほうがいいのではないか。

そう思ってしまうのです。誰も出ないまま鳴り続けたら、かけてきた相手はどう思うだろう。会社の看板に傷をつけてしまうのではないか。そんなことを考えます。

面接のとき、私は「聞き間違いで会社のブランドに泥を塗りたくないので、外部との電話は避けたいです」と伝えました。会社を守りたいから電話を避けたい、と言ったわけです。

その同じ気持ちが、今度は「出たほうがいいのでは」という形で出てきます。守りたい気持ちは同じなのに、向きが逆になるのです。

正直な気持ちも書いておきます。

考えているカワウソ
とおる

電話じゃなくて、メールにしてくれないかな。……愚痴です。

25歳のころ、電話で相手を困らせました

昔から、こんなふうに落ち着いていたわけではありません。

25歳になる前のことです。私は秋葉原で、イベント会社の仕事をしていました。各量販店へキャンペーンスタッフを送り出す仕事です。

あるとき、発注会社の担当者と電話で話すことになりました。仕事を頼んでくれる側の会社です。

その方の声が、低い声でした。

夜、静かな場所へ移動した補聴器をつけた男性が、携帯電話を強く耳に押しあて、眉を寄せて必死に聞き取ろうとしている

何を言っているのか、分かりませんでした。私は聞き返しました。それでも分からず、また確認しました。何度も繰り返すうちに、相手を困らせてしまったのが、電話ごしにも伝わってきました。

それでも、途中で投げ出すことはできませんでした。仕事だったからです。

私がやったことは、単純です。まわりが静かな場所を探して移動し、電話の音量を目いっぱい上げて、最後まで話しきりました。

かっこいい方法ではありません。でも、そのときの私にできることは、それだけでした。

この経験のあと、私は自分の耳のことを先に伝えるようになりました。まわりの人がみんな、私の耳のことを知っているわけではないからです。一時期は、メールの署名に「耳に障害があり、聞き取れない場合もあります」という一文を入れていたこともあります。

電話をやめたのではなく、置き換えました

今は、仕事の連絡はほとんどメールとチャットです。

私がやっていることを整理すると、この3つになります。

  1. 電話が難しいことを、先に伝えておく
  2. メールやチャットで足りる用事は、そちらに置き換える
  3. どうしても電話が必要なときは、理由を伝えて、代わりに聞いてもらう

順番に書きます。

オフィスで、補聴器をつけた男性がノートパソコンでメールとチャットを使って仕事を進めている。その向かい側では同僚が受話器を持ち、代わりに電話を受けてメモを取っている

社外の相手とは、基本的にメールでやりとりします。社内も、できるだけメールかチャットで済ませるようにしています。

ここで、理由を正直に書いておきます。「聞こえないから」だけではありません。

相手の時間を奪わないためです。

電話は、相手の作業をその場で止めてしまうことがあります。メールやチャットなら、相手は自分の都合のいいときに読んで、都合のいいときに返せます。だから、急ぎでなければ、私はメールやチャットを選んでいます。

電話が悪いと思っているわけではありません。場面によって、道具を選んでいるだけです。

ただし、電話をゼロにしているわけではありません。

社内で、何度も話したことのある人は別です。その人の声のくせや話し方を、私はもう知っています。だから聞き取れます。急いでいるときや、話したほうが早く伝わるときは、電話を使うこともあります。

署名の一文は、今は書いていません。電話に出ないので、必要がなくなったからです。

そのかわり、今はこうしています。私あての電話があるときは、「耳に障害があるので」と理由も含めて伝えたうえで、代わりに聞いてもらうようお願いしています。

黙って人に押しつけるのではなく、理由を言って頼む。これだけで、頼まれた側も納得してくれます。

補聴器とiPhoneをつなぐと、電話は聞きやすくなりました

道具の話もしておきます。

私は、iPhoneと補聴器をBluetoothでつないでいます。Bluetoothは、線を使わずに音を送る仕組みのことです。スマホの音が、そのまま補聴器に届きます。

これがあると、電話は大きく変わります。

私が使っている組み合わせでは、電話がかかってくるとすぐに、まわりの音を抑えてスマホの音を聞きやすくしてくれます。 外のざわざわした音が引いて、相手の声だけが耳に入ってきます。だから、話しやすいのです。

補聴器も設定も人によって違うので、みんなが同じようになるとは書けません。あくまで、私の場合の話です。

もうひとつ、見た目にも違いがあります。私は、スマホを耳に当てません。

耳に当てる必要がないからです。相手の声は、Bluetoothで補聴器に直接届いています。スマホの下のほうにはマイクが付いているので、スマホを口の近くに持ってきて話します

これが私にとって、いちばん聞き取れる持ち方です。

これは電話に限りません。YouTubeを見るときも、音楽を聴くときも同じです。

そして、ここが大事なところだと思っています。逆をやると、まったく聞き取れなくなります。

外の音を聞きながら、同時にスマホの音も聞こうとする。この状態になると、私は何を言っているのか分からなくなります。音が二つ重なると、どちらも取れなくなるのです。

つまり私にとって大事なのは、音を大きくすることではありません。聞く音を、一つに絞ることです。

私生活では、ふつうに電話します

ここまで読むと、私が電話を避けている人に見えるかもしれません。でも、私生活では違います。

私は、私生活ではバンバン電話をかけます。

自宅のリビングのソファで、補聴器をつけた男性がくつろいだ姿勢でスマートフォンを口元に近づけて持ち、笑顔で話している

もちろん、聞き取れないことはあります。そのときは、こうお願いします。

「すみません。うまく聞き取れないので、もう少し大きな声で話してくれないでしょうか」

これだけです。私の場合は、こう頼めば話し直してもらえています。

25歳のときの私は、これを先に言っていませんでした。分からないまま聞き返し続けて、相手を困らせました。今は、先に「聞き取れない」と言ってから頼むようにしています。同じ「もう一度」でも、相手の受け取り方は変わると思っています。

難聴だから電話ができない、ではありません

ここまで書いてきて、自分でも整理がつきました。

私が仕事で電話を避けているのは、聞こえないからだけではありません。聞き間違えたときに困るのが、自分ではなく会社だからです。社外に出ていく電話は、会社の看板を背負っています。だから、そこは慎重にしています。

反対に、私生活の電話は、聞き間違えても背負うものが違うと思っています。もう一度聞けばいいだけです。だから、平気でかけられます。

同じ耳で、同じ電話です。違うのは、そこで何がかかっているかです。

私は電話をなくしたのではありません。どこで使って、どこで使わないかを、自分で決めているだけです。

そして決めるためには、先に伝えておく必要があります。聞こえないことも、代わりに出てほしいことも、言わなければ誰にも分かりません。

まとめ

電話が苦手なら、全部できるようになる必要はないと思っています。

メールに置き換える。チャットを使う。必要なときは、まわりに頼む。聞き取れなければ、先にそう伝える。

電話を「できる・できない」の二択にしなくてもいいのです。私は、使う場所と使わない場所を分けることで、仕事をしています。

そのうえで、まず試すならこれだと思います。

次に聞き取れなかったとき、「すみません、うまく聞き取れないので、もう少し大きな声でお願いできますか」と、先に伝えてみる。

聞き返す前に、聞き取れないことを伝える。順番を変えるだけで、その電話は少し楽になるかもしれません。

この記事を書いた人
とおる

難聴のある会社員です。聞こえないぶんを、AIと仕組みで補いながら働いています。
補聴器とiPhoneを直結し、字幕を使い、面倒な作業は自動化する——そんな日々の工夫を、専門用語なしで書いています。

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