難聴で仕事がつらいときに、私がやっていること|待つより自分から動く

難聴のエンジニアが窓辺の机でノートパソコンとメモ帳を前に、ふり返って外を見ている。タイトル文字「開き直ることと、放置することは違います。待つより、自分から動く」

聞き逃して、答えられなかった。
雑談の輪に、入れなかった。
会議で、話に置いていかれた。

私も、何度もあります。一度や二度ではありません。

私は感音性難聴で、両耳に補聴器をつけて働いています。この記事は「こうすればつらくなくなる」という話ではありません。同じようにつらい場面を何度もくぐってきた私が、実際にやっていることの話です。

この記事でわかること

  • 聞き逃し・雑談・会議のつらさに、私がどう向き合っているか
  • 会社に大きな損失を出してしまったとき、私が何をしたか
  • それでもつらいときの、環境の変え方

なお、就職や面接の話は別の記事に書きました。この記事は「いま働いていて、つらい」ときの話です。

聞き逃しも、雑談に入れないことも、何度もあります

最初に正直に書きます。

聞き逃しての失敗も、雑談に入れないことも、会議で置いていかれることも、私は何度も経験しています。いまも、なくなってはいません。

補聴器をつけた男性が机で考えこみ、その後ろでは同僚3人が楽しそうに雑談している。雑談の輪に入れない場面のイラスト

そのうえで、私は「気にしても仕方がない」と開き直っています。

ただし、開き直ることと、放置することは違います。私は開き直りますが、そのまま放置はしません。ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

待っていても、相手は接し方が分からない

なぜ放置しないのか。理由は単純です。

相手も、聴覚障害のある人にどう接すればいいか、分からないからです。

こちらが黙って待っていても、相手は「どう声をかけていいか分からない」まま止まっています。だから、待つより自分から動くしかないのです。

補聴器をつけた男性が、パソコンに向かう上司の席へ自分から行き、身ぶりを交えて話しかけている。上司は顔を上げて聞いている

私が実際に上司に言っている言葉を、そのまま書きます。

  • この案件、答えられなかったのですが、大丈夫ですか?
  • この件を、もう一度聞かせてください

こう聞くと、上司はそのときどきで「これは◯◯してほしい」「大丈夫」と返してくれます。黙って抱えているより、聞いたほうが早いのです。

ひらめいたカワウソ
とおる

相手は待っています。だから、こちらから声をかけます。

もう一つ、心がけていることがあります。先手で伝えることです。

上司にもスケジュールがあります。問題が大きくなってから伝えるより、早めに伝えたほうが、上司も動きやすい。だから私は、なるべく先に伝えるようにしています。

そして、これも書いておきたいのです。

気にしないなら、それでもいい。気になるなら、その都度、自分から話せばいい。どちらでもいいのです。大事なのは、自分がどうありたいかです。

たとえば雑談なら、「実は雑談に入りたいのですが、どんな話かうまく聞き取れなくて入れません。大丈夫ですか?」と聞いてもいいと思います。

ただ、正直に書くと、いまの私は、雑談のことをそこまで深く考えていません。目の前の業務を早く終わらせるほうに、気持ちが向いているからです。気にならないなら、それでいい。気になったら、聞けばいい。本当に、それだけなのです。

得意・不得意は、チームリーダーに伝える

ただし、会社はチームで動いています。自分ひとりの「どうありたいか」だけでは済まない部分もあります。

だから私は、自分の得意なこと・不得意なことを、チームリーダーに伝えるようにしています。

補聴器をつけた男性がチームリーダーと机をはさんで話し、胸に手を当てて自分の得意なこと・不得意なことを伝えている

チームリーダーは、チームをまとめて動かすのが役割の人です。メンバーの得意・不得意を知ることは、リーダーの仕事の材料になります。だから、遠慮はいりません。伝えることは、わがままではなく、チームへの協力です。

もし伝えても聞いてもらえないなら、部署を変えてもらう相談をするか、転職という道もあります。

もちろん、すぐに環境を変えられない事情がある人も、いると思います。だから、まずは今いる場所でできることを試す。それでも変わらないなら、環境を変えることも選択肢に入れていい。私はそう考えています。

人生は一度きりです。変えたいなら、行動していきましょう。

会社に大きな損失を出したとき、私がやったこと

「辞めたい」と思ったことは、もちろんあります。

いちばん大きかったのは、お金にかかわる失敗で、会社に大きな損失を出してしまったときです。会社の看板に泥を塗ってしまった、と思いました。

そのとき私がやったのは、こうです。

まず、上司の指示にしたがって、Excelで正しい数値を計算し直して、訂正しました。当時の私は、まだ仕事の仕組みがよく分かっていない時期でした。だからこそ、ひとりで抱えずに、上司と一緒に立て直しました。

補聴器をつけた男性がノートパソコンの表計算ソフトを険しい顔で見つめている。隣には、書類からデータベースへ、そして歯車(仕組み)へと流れる矢印の図

そして、そこで考えたのです。数字を扱う人間は、手で入力するのを避けたほうがいい、と。

人からの依頼を、手で打ち直すのではなく、そのまま反映できる方法に変えていく。この改善が、いま私がやっている業務効率化の原点になりました。失敗が、仕組みづくりの出発点になったのです。

私にとって自動化は、仕事を速くするためだけのものではありません。人が間違えやすい作業を、仕組みに渡すことでもあります。同じ失敗を繰り返さないための、いちばん確実な方法だと思っているのです。

やる気のあるカワウソ
とおる

失敗のあとの動き方は、自分で選べます。

会社に勤めている以上、失敗はつきものです。私が接してきた経営側の人たちも、そこは分かってくれていました。

大事なのは、失敗したあとです。放置するのではなく、スピード感をもって対処して、同じ失敗が起きない仕組みをつくる。私はそう動いてきました。そして、その動きを評価してくれる会社も、実際にありました。

うまくいかない日は、いまでもあります

きれいごとにならないように、いまの話も書きます。

私はいま、AIを使ってプログラムを組む仕事もしています。それでも、なかなかうまくいかないことはあります。AIを使っても、限界はあるのです。

うまくいかずに頭を抱えてパソコンに向かう男性と、気持ちを切りかえて別の作業に向かう同じ男性の、2つの場面を並べたイラスト

そういうとき、私は一度立ち止まります。別の案件を先に進めるか、気分転換をするか。ねばり続けるだけが、やり方ではありません。

そして、ここでも上司にすぐ伝えます。

これがうまくいかないので、ちょっと別の案件を進めますね

こう言うと、上司から「こうしてみたら」と提案が返ってくることもあれば、「了解」のひとことで済むこともあります。どちらにしても、黙って止まっているより、ずっといいのです。

それでもつらいなら、環境を変えていい

最後に、環境そのものの話をします。

私は、人間関係がつらくて会社を辞めたことはありません。ただ、会社の組織が変わって人事の制度が見直され、収入が大きく下がったことがあります。

私はまず、頑張って収入を戻そうとしました。でも、結果を出しきれませんでした。それで、転職に踏み切りました。

つまり、こういうことです。その場で戦うことも、環境を変えることも、どちらも選べます。私は両方やりました。順番として、まず動いてみて、それでもだめなら環境を変える。それでいいと思っています。

リュックを背負った補聴器の男性が、公園の分かれ道の前に立ち、街へ続く2つの道しるべを見ている

転職は大きな決断ですが、転職活動そのものは、いつでも始められて、いつでもやめられます。私が障害者雇用枠で転職したときの流れは「聴覚障害の就職は不利だけじゃない」に、面接の場面のことは「難聴の私が、面接を怖いと思わない理由」に書きました。つらさが限界に近い人は、先にこちらを読んでみてください。

まとめ:毎日が成功だったら、つまらない

私がやっていることを、ならべ直します。

  • 聞き逃しも雑談も、開き直る。でも放置はせず、自分から上司に声をかける
  • 上司にもスケジュールがあるから、先手で伝える
  • 得意・不得意はチームリーダーに伝える。それはわがままではなく、チームへの協力
  • 失敗したら、スピード感をもって対処して、再発しない仕組みをつくる
  • 伝えても変わらないなら、異動の相談や転職という道もある

私は、人生は失敗がつきものだと思っています。失敗した日は、その日はつらい。でも、あとから振り返ると、その失敗から仕組みが生まれたこともありました。

毎日が成功だったら、人生はつまらない。 いまの私は、そう思っています。

うれしそうなカワウソ
とおる

失敗があるから、次の仕組みが生まれます。

もし、いまの仕事がつらくて、この記事にたどり着いたのなら。

まずひとつだけ、試してみてください。次に聞き逃したとき、あとからでいいので、上司にひとこと聞いてみる。「さっきの件、答えられなかったのですが、大丈夫でしたか?」——それだけで、相手の反応は変わります。

職場の側にできることも、もちろんあります。でも、相手が私の聞こえ方をすべて分かってくれるとは限りません。だから私は、待つより、自分から動くことを選んでいます。


※この記事は、私自身の体験と、そこから考えたことの整理です。すべての職場・すべての人に当てはまる方法ではありません。合う部分だけ、持ち帰ってもらえたらうれしいです。

この記事を書いた人
とおる

難聴のある会社員です。聞こえないぶんを、AIと仕組みで補いながら働いています。
補聴器とiPhoneを直結し、字幕を使い、面倒な作業は自動化する——そんな日々の工夫を、専門用語なしで書いています。

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