難聴エンジニアのデスク環境ぜんぶ公開|机を手放しても仕事が回る道具の選び方

難聴エンジニアのデスク環境:畳める2画面モバイルモニターとロジクールのキーボード・トラックボールを置いた机。畳める2画面/トラックボール/同じ道具を2セット/高い道具はメルカリで試す、の4点をまとめたアイキャッチ 聴こえないこと

以前の私の部屋には、27インチの大きなモニターが立っていました。机は、ボタンひとつで高さが変わる電動の昇降デスク。画面は広く、立っても座っても作業できて、いい環境だったと思います。

その机は、今はありません。娘の学習環境をつくる必要があって、片づけました。

でも、仕事は変わらず回っています。理由は、道具の選び方を変えたからです。前回の記事「聴こえないから、仕組みを作る ― 難聴エンジニアの仕事術」では、聴こえない私がどう働いているかを書きました。今回はその「道具編」です。

この記事でわかること

  • 常設の机がなくても仕事が回る、道具の選び方
  • 同じ道具を「自宅用」「会社用」に2セット買うという考え方
  • 高い道具を買うときに、失敗しないための考え方

先に、いま使っているものを一覧にしておきます。

今つかっているもの 選んだ理由
画面 JAPANNEXT JN-DMD-i156F(15.6インチ・2画面) 使うときだけ開いて、畳んでしまえる
マウス ロジクール MX ERGO(旧型) 本体を動かさずに操作できる。パソコンの切り替えがボタンひとつ
キーボード ロジクール MX MECHANICAL MINI 自宅と会社を同じ配置にそろえる
なし(常設していない) 娘の学習スペースを優先した
パソコン 自宅はMac/会社はWindows 仕事によって使い分け

先に言っておくと、ぜんぶが「難聴のための道具」ではありません

これから紹介する道具は、全部が難聴のための道具というわけではありません。ふつうに便利だから使っているものもあります。

ただ、道具を選ぶときの物差しは、たぶん人と少しちがいます。

私の場合、聴こえないことは「音が聞こえない」だけのことではありません。人の話を受け取るとき、私は相手の口の動きを見て、文脈から足りない言葉を埋めています。耳だけで聞いているのではなく、目と頭を同時に使って、その場で組み立てているのです。聴こえ方は人によってちがうので、これはあくまで私のやり方です。

だから、人と話しているあいだ、私の頭はずっと忙しく動いています。いろいろなことを一度に処理していると、処理が追いつかなくなります

そうなると、パソコンの操作にまで頭を使う余裕はありません。だから私の物差しはこれです。

ひとつひとつの動作や判断を、無駄に使わない。

動かす回数を減らす。迷う時間を減らす。そうして浮いた分を、仕事そのものに回したい。この記事の道具は、その考え方で選んだものです。

その机は、家と会社を往復していた

そもそも私の机には、少し長い歴史があります。

最初に使っていたのは、手で回して高さを変える昇降デスクでした。昇降デスクというのは、天板の高さを上げ下げできる机のことです。高くすれば立ったまま、低くすれば座ったまま作業できます。

コロナのころは、この机を自宅に置いて仕事をしていました。その後、会社に出社する日が増えてきたので、今度はこの机を会社に持っていきました

しかも、運んだのは自分です。人のいない早朝をねらって、自力で運び込みました。

そして、会社でこの机が必要なくなり、また自宅に持ち帰りました。同じ机が、家と会社を一往復したことになります。

ただ、手で回すタイプは、だんだん動きが鈍くなっていきました。上げ下げが面倒になると、結局ずっと同じ高さのまま使ってしまいます。それでは昇降デスクを持っている意味がありません。そこで、ボタンひとつで上下する電動の昇降デスクを買い直しました。

ここまで手をかけた机です。それを、私は次の理由で片づけることになります。

机を手放して、モニターを「畳めるもの」に変えた

【使用ツール】 JAPANNEXT JN-DMD-i156F(15.6インチ・2画面モバイルモニター)
【仕組み】 使うときだけ開いて2画面にして、終わったら畳んでしまう

以前使っていたのは、DELLの27インチ4Kモニター「S2722QC」です。4Kというのは、画面がとても細かくて、文字がくっきり見えるという意味です。白くて大きくて、気に入っていました。

ただ、この大きさは置きっぱなしにしないと使えません。娘の学習スペースが必要になったとき、私はこの環境をたたみました。家と会社を往復させて、わざわざ電動に買い直したあの昇降デスクも、このとき処分しました。

今使っているのは、JAPANNEXTの「JN-DMD-i156F」という15.6インチのモバイルモニターです。モバイルモニターというのは、持ち運べる薄い画面のこと。しかもこれは、開くと画面が2つになるタイプです。

「画面は広くほしい」と「机を占領したくない」は、ふつうなら両立しません。それを同時に成り立たせてくれたのが、この形でした。

開くと2画面になるので、資料と作業中の画面を、同時に出したままにしておけます。画面を切り替える操作が減るのは、あとで書く「会社で画面を2枚にしたとき」にも感じたことでした。

道具を選ぶとき、私は「大きさ」より「戻せるかどうか」を見るようになりました。

マウスをやめて、トラックボールにした理由

【使用ツール】 トラックボール(親指でボールを転がしてカーソルを動かす道具)
【仕組み】 本体を動かさないので、手首を動かす回数が減る

私はもともと、ふつうのマウスを使っていました。変えるきっかけは、会社でモニターを2枚にしたことです。

画面が2枚あると、いくつものアプリを開いたままにしておけます。いちいち画面を切り替える操作がなくなって、これはとても快適でした。

ただ、思わぬ副作用がありました。画面が広くなった分、マウスを動かす回数と距離が増えたのです。私はふだん、なるべくマウスを使わずにショートカットキー(キーボードの組み合わせで操作する方法)で作業しています。それでも画面が2枚になると、マウスの出番はどうしても増えます。その結果、手首がつらくなりました

そこで試したのがトラックボールです。トラックボールというのは、本体を動かさずに、親指でボールを転がしてカーソルを動かす道具です。本体が動かないので、手首を動かす必要がありません。

このとき、いきなり買ってはいません。社内にトラックボールを使っている同僚がいたので、借りて試させてもらいました。

正直に書くと、最初はまったく思ったところにカーソルが行かず、けっこう戸惑いました。でも使い続けているうちに、それが当たり前になっていきます。今ではこちらの方が使いやすいです。最初の使いにくさは、慣れていないだけのことがほとんどです。

そして今、立場が逆になりました。今の職場にはトラックボールを使っていない人もいるので、気になっている人に私が貸し出しています。 みんながトラックボールに切り替えて、職場全体の仕事がはかどるようになったらいいな、と思っています。

トラックボールは、安いモデルから始めて2年後に乗り換えた

【使用ツール】 ロジクール MX ERGO(旧型)
【仕組み】 ボタンひとつで、自宅のMacと会社のWindowsを切り替える

最初に買ったのは2022年5月、ロジクールの「M575S」でした。入門用の、手が届きやすい値段のモデルです。

これを2年ほど使って、2024年に「MX ERGO」に買い替えました。理由は単純で、機能が足りなかったからです。結果は、変えて正解でした。

いちばんありがたいのが、複数のパソコンを切り替えられる機能です。私は自宅がMac、会社がWindowsなので、ボタンひとつで相手が切り替わるのは本当に楽です。

正直に書くと、私が使っているMX ERGOは、今となっては旧型です。新しいものはType-C(今のスマホと同じ形の差込口)で充電できるので、ケーブルに困りません。私のは古い形なので、変換するアダプタをいつも用意しています。

それでも買い替えていないのは、電池が1週間に1回の充電でもつからです。困っていない道具を、新しいというだけで買い替える必要はないと思っています。

とはいえ、足りないと思っているところも2つあります。どちらも「動作を減らしたい」という私の物差しに引っかかる部分です。

ひとつは、キーボードとマウスの切り替えが別々なことです。今はパソコンを切り替えるとき、キーボードとマウスをそれぞれ切り替えないといけません。1回で済むはずの操作が、2回になっています。これがひとつの操作でそろって切り替わる機種が出たら、私は即買います。

もうひとつは、高速スピンスクロールがないことです。これは、ホイールを勢いよく回すと長いページを一気に下まで送れる機能のこと。今は同じところを何度も回さないといけません。長い表を見るときなど、これがあれば1回の動作で終わります。

同じ道具を、自宅と会社に2台ずつ置いている

【使用ツール】 ロジクール MX MECHANICAL MINI / MX ERGO
【仕組み】 持ち運ばない。まったく同じものを2台買って、自宅と会社に置く

ここが、私のいちばん変わっているところかもしれません。

キーボードもトラックボールも、まったく同じものを2台ずつ買って、自宅と会社に置いています

理由は、自宅がMac、会社がWindowsだからです。この2つはキーボードの配置が少しちがいます。毎日その差に指を合わせ直すのは、地味ですがけっこうな負担です。同じ道具を両方にそろえてから、私の仕事は確実にはかどるようになりました。

買った日を並べると、こうなります。キーボードは2024年6月20日と6月30日。トラックボールは6月25日と7月13日。1台をしばらく使って「これはいい」と確かめてから、数日〜数週間後にもう1台を買い足しています。

持ち運べばいいのでは、と思われるかもしれません。でも私は、持ち運ばない方を選びました。同じ道具が、いつも同じ場所にある。それだけで、手が迷わなくなります。

これも、判断を減らすための工夫です。キーの位置を思い出す。持ってくるのを忘れないようにする。そういう小さな考えごとを、机の上から消していきました。

高い仕事道具は、メルカリで「試す」

MX ERGOは、決して安い道具ではありません。そして今度は、これを使っている人が周りに1人もいませんでした。最初のトラックボールは同僚から借りて試せましたが、上位のモデルはそうはいきません。つまり、借りて試すことができないのです。

いきなり新品で買って、手に合わなかったら大損です。そこで私は、メルカリで買いました。

考え方はこうです。合わなかったら、またメルカリで売ればいい。

そう考えると、買い物の意味が変わります。「失敗するかもしれない支払い」ではなく、「しばらく試すための、一時的な立て替え」になるのです。実際、今使っているキーボードもトラックボールも、手放したDELLのモニターも、メルカリで買ったものです。

難聴だからできない、ではない

ここまで道具の話をしてきましたが、いちばん伝えたいのはここです。

私が道具を替えてきたのは、根性の話ではありません。頭の中の処理を減らしたかったからです。聴こえない分だけ、私は人と話すときに頭を使います。だったら、それ以外のところは減らしておきたい。それだけのことです。

そして、そのための道具は、試さないと自分に合うかどうか分かりません。

難聴だから何もできない、ということはありません。難聴でも、いろいろ試すことはできます。

大事なのは、試すのをためらわないことです。自分にとって仕事がはかどる方法が見つかったなら、そこにはお金を使っていい。私はそう考えています。

そして、失敗してもいいと思っています。失敗は、失敗した人にしか手に入らない経験になるからです。合わなかった道具を買った人は、「なぜ合わなかったのか」を語れます。買わなかった人は、何も語れません。だったら次はどうするかを考えて、進めばいいだけです。

私は年齢に関係なく、新しい製品が出るととても気になるタイプです。変化そのものが好きなので、なおさらとことんやります。

まとめ

私の机は、以前より確実にせまくなりました。それでも仕事が回っているのは、道具を「大きさ」ではなく「戻せるか」「判断を減らせるか」で選び直したからです。

もし今、気になっている高い道具があるなら、一度こう考えてみてください。「メルカリで買って、合わなかったら売る」。それだけで、ずっと買えなかったものが、急に手の届く場所に来ます。

次は、この机の上で毎日動かしているソフトの話を書きます。

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